『文化の消費者、文化の生産者』 by永井隆博士
5年ほど前、オットの長崎出張についていったことがありました。福岡出身のわたしは長崎は修学旅行や家族旅行で訪れたわりと身近な土地でした。仕事が終わったオットと夕方待ち合わせをし、時間がないので一箇所だけ観光に行こうかと言い、タクシーに乗って『平和記念公園に行ってください』といいました。すると、運転手さんは記念公園についたあと『もう少しお時間ありましたらご案内したいところがあるんですが』と言いました。
それが永井隆博士が住んでいたという部屋を保存してある場所でした。日も暮れていて灯りも乏しかったのでガラス戸に顔をくっつけるようにして中をみたのですが、人が二人はいればいっぱいになってしまいそうな部屋でした。そこに行くまでわたしは永井博士を知りませんでした。永井博士は放射線医学研究家で、その障害を受けて白血病になり、自分の体が弱っているにも関わらず、被爆者の手当てに尽力した人でした。
運転手さんは『時間が無い中、平和公園にだけ行こうというお客さんの気持ちに思わず反応してしまいました』と言っていました。そしてわたしたちはその後、一本足鳥居、大浦天主堂など長崎が歩いてきた歴史の深さを見てまわる2時間のドライブをしました。運転手さんの説明はそのときにその場にいたかのような臨場感と、自分のことのような悲しみをたたえた言葉で語られました。その長崎の時間は忘れられない時間になりました。
そんな長崎の旅を思い出す機会が最近ありました。Mayumiさんから教わった『愛されるよりも』高見澤潤子著の本を読んでいたとき、永井博士の逸話が描かれていたのです。永井博士夫妻がある日、ある旧家に招かれ豪華な接待を受けたとき、妻が『わたしたちには一生できない生活ですね』と言ったそうです。そのとき、博士が『あれは文化を享楽する生活だよ、文化の消費者だ。ぼくらは文化を創作する生活、文化の生産者なんだ』と言い、二人で笑顔になったそうです。
この言葉が最近のわたしに心底、沁みました。『文化の生産者』という言葉に値する生き方をしたい、そう強く思いました。
Mayumiさん、良い本のご紹介ありがとうございました。
コメント
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ぢゅんさん
「愛されるよりも」を読んで、沢山感じるものを持っていただけたようで、とても嬉しいです。
今、この本を、Kaoriさんに貸しています。ちょっと難しい~と彼女は言っていますが、どうでしょう。何だか、行間から感じる優しさや深さを感じるだけでも、何だか良い本のような気がするんです。だから、大好きな本なのだと思います。
投稿: Mayumi | 2007年2月12日 (月) 19:59
ぢゅんさん、こんばんは!
私も「文化の生産者」でありたいです。
すごくいいお話ですね。
新しい気づきをいただけたような気がします。
ありがとうございます。
投稿: Serena_fiona | 2007年2月12日 (月) 23:09
Mayumiさん、こんにちは!
実はわたしも読むのにかなりながーい時間がかかりました(笑)。文章のテンポに慣れるまでに時間がかかったのかもしれません。きちんとした文章という気がしました。(あ、わたしがきちんとしていないのがバレチャッタ(^.^))でも聖書の言葉など普段のわたしが触れることない言葉に出会えて収穫の多い本でした。ありがとうございました!
投稿: ぢゅん | 2007年2月13日 (火) 11:31
Serena_fionaさん、こんにちは!
わたしも永井博士のことはすっかり忘れていたのですが、今回絶妙なタイミングで思い出す機会を頂いてよかったと思っています。言葉って必要なときに飛び込んでくるものですね。それに敏感な自分でありたいと思います。
投稿: ぢゅん | 2007年2月13日 (火) 11:33
ぢゅんさん、こんばんは。
↑のぢゅんさんの言葉が素敵です!
>言葉って必要なときに飛び込んでくるものですね。
ぢゅんさんの感性は、やっぱり凄いです!
投稿: マクロ美風 | 2007年2月19日 (月) 00:37
マクロ美風さんへ
こんにちは!
お変わりなく精力的な活動をされていて眩しいかぎりです!
美風さんにほめられると、心がほわってあったかく軽くなります。
美風さんこそ、言葉の魔術師です!
いつもありがとうございます!
投稿: ぢゅん | 2007年2月19日 (月) 14:25